アメリカマーケティングの常識、比較広告について


 日本でマーケテイングをかじってから、アメリカに移り、マーケテイングをスタートしたときに一番驚いたことの一つに、アメリカの露骨な比較広告があります。大胆に競合企業の商品と自社商品を比較し、優位性を謳う広告に「これって合法なの?!訴訟にならないの?」と非常に驚きました。

 比較広告とは、自社の製品やサービスを競合他社のものと直接比較し、自社の優位性を強調するマーケティング戦略です。アメリカでは、比較広告は合法であり、連邦取引委員会(FTC)とランハム法によって規制されています。マーケティング大国アメリカでは、誰もが知る企業から、スタートアップまで、各社うまくこの手法を活用しています。ここでは、アメリカにおける比較広告の仕組みを成功事例を交えてご紹介します。

 

1.       アメリカにおける比較広告の仕組み

2.       成功した比較広告の事例

3.       まとめ



1.       アメリカにおける比較広告の仕組み

アメリカでは、比較広告は “真実であり、誤解を招かず、競合他社の製品やサービスを誹謗中傷しない限り” 許可されています。FTCとランハム法は、公正な競争を確保し、消費者を虚偽または誤解を招く主張から保護するためのガイドラインを設定しています。具体的な要件は以下です。

  • 広告での主張は、事実に基づく証拠とデータによって裏付けられていること。

  • 比較は、関連性があり検証可能な製品やサービスの属性に基づいて行われること。

  • 競合他社の製品やサービスに関する虚偽または根拠のない主張は行わないこと。

  • 比較は、消費者を混乱させたり誤解させたりしないように提示すること。

 

推奨要件としては以下。

  • 競合他社を攻撃するのではなく、自社製品やサービスの独自の特徴と利点を強調することに焦点を当てる。

  • 明確で客観的な言葉を使って比較を行う。

  • 比較がターゲットオーディエンスの購買決定に関連していることを確認する。

  • 裏付けられない誇張や主観的な主張を避ける。

上記の条件を満たしていることを証明できる限り、具体的な企業名、商品名を使い、比較することが許されているわけです。

 

2.       アメリカでの成功した比較広告の事例

では具体的に過去にどのような比較広告が成功したか、誰もが知る企業の戦いを例にみていきます。

Mac vs. PC 

Appleの「Get a Mac」キャンペーンは、MacコンピュータとPCの違いを強調し、Macがクールでスタイリッシュで使いやすいとし、PCは時代遅れで技術的な問題が多いと描写しました。

 

Zero Water vs Brita 

アメリカの浄水ピッチャーの巨人Brita に挑んだ後発のZero Water 。自社のフィルターを通した水は不純物が0で、Brita の水は多くの不純物を含むという広告で、注目を集めました。測定器をセットで売ることで、Youtuber やインフルエンサーも試用して発信する形で拡散され、一気に市場での認知と地位を確立しました。

 

Verizon vs. AT&T

通信大手のVerizon の「There's a Map for That」キャンペーンでは、ネットワークカバレッジを地図で比較し、視覚的にわかりやすく、ベライゾンの方が広範で信頼性のあるカバレッジを提供していると主張しました。AT&Tはこれに対して名誉毀損で訴訟を起こしましたが、裁判所はベライゾンの広告が真実に基づいていると判断し、広告の続行を許可しました。

 

Wendy’s vs. McDonald’s

Wendy’s が行ったTwitter (現X)でのキャンペーン画像が物議を醸しました。マクドナルドのビッグマックが塵になる様子を描いたものでした。その画像自体クリエイティブで象徴的なもので、これは、ウェンディーズが新鮮な(つまり冷凍されていない)ビーフを使用しているというメッセージをマクドナルドとの比較を通じて伝えたものです。

 

3.       まとめ

 このようにアメリカでは比較広告が合法であり、消費者に製品やサービスの選択肢を提供するために広く利用されています。しかし一方で日本では、基本的には直接競合他社と比較する広告は法律で禁止されており、慣習として具体的な他社製品との比較をマーケティングに活用することに大きなハードルがある企業がほとんどです。(法的なリスクはもちろん、はしたないなど心理的なハードルもあると思います)

 しかし、アメリカではマーケティングの「わかりやすさ」が何よりも重要で、「わかりやすさ」を表現するためには比較広告は大きな力を発揮します。日本企業がアメリカ市場でのマーケティング戦略を実施する際にはこの点を念頭に、市場に合ったマーケティング方法を検討することが重要です。日本の商品は既存の商品と比較し、優位性のあるものが沢山あります。以下の点を抑えて、効果的な戦略を立案、実行していくことで、パワフルにスピード感をもって市場を創出できるでしょう。

  • 法的要件を遵守し、すべての主張が事実に基づいていることを確認する。

  • 自社の製品やサービスの独自の利点を強調し、競合他社を攻撃するのではなく、客観的な比較を行う。

  • ターゲットオーディエンスに関連する比較を行い、消費者を混乱させないようにする。

  • 裏付けとなるデータを用意し、正確で最新の情報に基づいて比較を行う。

 

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=icwWpAHReWg

https://www.kimp.io/comparative-advertising/

https://blog.hubspot.com/marketing/comparative-advertising

https://www.investopedia.com/terms/c/comparative-advertising.asp

https://www.sortlist.com/blog/comparative-advertising/

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