<2022展示会レポート④> どっちに出るべき?ニューヨークの展示会比較 - NY NOW vs Shoppe Object
先月8月半ばに、ニューヨークでは、注目度の高いギフト展NY NOWとShoppe Object が同時開催されました。ニューヨークは先日公共機関でのマスク着用についても任意となり、ほぼコロナ前と同レベルの経済活動が再開。展示会についても、前回までは設けられていたワクチン証明提出や、マスク着用の義務はなく、2020年のコロナ拡大以降最大級に人手の多い展示会になりました。
弊社は今回NY NOWに出展しましたが、同時開催ということと、また、Shoppe Object 自体がNY NOWとの独自性を強く意識した展示会であること。そしてさらにAccent on Design という、元々NY NOWの中にあった、トレンド性の高いブランドを集めた注目度の高いエリアに出展していた少なくないブランドがShoppe Object へ移動したことから、出展ブランドとしては「一体どちらの展示会に出展すべきなのか?」ということが非常に気になるところです。
(ちなみに基本的なルールとしてNY NOWに出展しているブランドはShoppe Object に出展することはできません。)
私たちは前身のMira Design からNY NOWに10年近く連続出展していますが、去年辺りから、市場開拓という点においてどちらの展示会に出展すべきかということを検討してきました。今回隅々までそれぞれの展示会場を巡り、考察した結果をレポートにまとめたいと思います。最初に結果を申し上げると、私たちは、商材の特性、ブランディング、目指すべき商流という観点においてNY NOWへの継続出展を決断しました(あくまで現状は)。しかし、どちらの展示会にもそれぞれプラスマイナスがあり、それらを考慮したうえで、ブランドや商材、販売戦略の中で適正なものを判断する必要があるなと感じました。
ついでに市場トレンド情報も織り交ぜつつ、今後アメリカのギフトショーに出展を検討されている皆様の一つの判断材料になれば幸いです。
目次
SHOPPE OBJECT について
NY NOWについて
まとめ
■ SHOPPE OBJECT https://shoppeobject.com/
8月14日から16日の三日間、Pier 36というダウンタウンエリアで開催されました。今回は7回目で、大小400以上のブランドが出展しました。フロアマップとカテゴリは以下のとおり。ハイブリッドショーを掲げていて、年に二回の実際の展示会のほかに、Shoppe Online というデジタルショーも開催しています。
SHOPPE OBJECT は「次世代」、つまりミレニアルズやジェネレーションZを強く意識した展示会であることが一番の特徴といえます。各ブランドのコンセプトや、社会的な影響力、ファウンダーや作り手の声や想いを積極的に語らせるといった発信内容にも、そうした強い方向性を感じ取ることができます。
展示会場や一つ一つのブース、通路など全てが小さいため、会場全体に人がひしめきあい、活気が感じられます。通常大きいブースはメインのエリアを獲得できる可能性が高いのですが、SHOPPE OBJECT ではブース配置の交渉は一切できず、主催者がテーマや全体のバランスを考慮してブース配置を決めています。
中央や前方のメインエリアは、小さいながらテーマの統一されたブランドたちで賑わい、大手ブランドなどの大きめのブースは比較的会場端のほうに配置されていることも、主催者の強いポリシーを感じて面白いなと思います。
昨今のカラートレンドの傾向にもあるように、自然が感じられるものや、温かみのあるもの、ミニマルな美しさを見せるブースがメインでしたが、一方では エッジのあるカラーや、カラーコレクションで目を引くZ世代を意識したブースも。 環境をいたわる、自分自身をいたわる」をイメージを想像する言葉や、「丁寧につくった/厳選された」を強調するブランドが非常に多く出展していました。商品としては、セルフケアや、生活の癒しに関係するようなアイテムのラインナップが広くみられ、「シンプル/本物/洗練」の訴求のブランドも変わらず存在感あります。近年のサスティナブル志向の急上昇のより、地球/社会/自分自身にとって善い選択をしたいという市場の流れが強いといえます。
■NY NOW https://nynow.com/
8月14日から17日の4日間、Javits Center というニューヨークのビックサイトといえるようなメインの展示会場で行われました。(毎回この会場)900以上のブランドが出展し、10000以上の来場者が訪れました。以下が開示されている出展社の内訳です。SHOPPE OBJECT 同様、オンラインのマーケティングプラットフォームは用意されていますが、オーダーをつけたりすることはできず、あくまで来場前の情報収集などに使われる程度にとどまっています。
コロナで出展社が激減した前回、前々回に比べるとかなり出展社は戻ってきており、今回はメイン会場の端から端まで、多くのブランドでにぎわっていました。ただ、セクションの大編成が起きており、前述のAccent on Design セクションは大幅に規模を縮小。以前同時開催されていた文具系の展示会(National Stationery Show)とは統合されたため、文具ブランドが多く流れ込んできています。
また今回驚いたのは、アパレル、ファッションアクセサリー系のブランドの出展が増えたこと。Coterie https://coteriefashionevents.com/ というファッションで権威のあったニューヨークの展示会に出ていたようなブランドがNY NOWに出展していることは意外でした。これは洋服などを扱うブティックが、ライフスタイルとしてギフト(キャンドル、文具、ビューティーなど)を幅広く扱うようになったからと推測されます。日本市場だけでなく、アメリカもアパレル市場はブランド志向、大量消費時代からの大きな変革を迫られているといえます。
実際にブースにたってみて、バイヤーのトラフィックも前回よりも多いように感じました。特に2,3日目のお昼前後におけるトラフィックは非常によく、ホリデーに向けた旺盛な買い付けが行われました。
■まとめ
それぞれの展示会の特徴をまとめると、以下になると言えます。
SHOPPE OBJECT
ミレニアルズ、Z世代向けの印象が強めの展示会。ブースのサイズや展示ブランド数は、NY NOWよりも小規模。全体的にカジュアルでトレンディーである。
ブランドサイズはスモールバッチを扱うような、ファウンダーの顔が直接みえるレベル感のブランドのほうが合うような印象。
商材としては、新規性の高いもの(ややニッチなものや、新規市場開拓系のもの)、ミニマルで可愛い/綺麗さがあるもの(豪華なイメージと逆方向にあるもの)、サスティナブルなコンセプト(カラーや素材、カテゴリー)に強いブランドは、相性が良さそう。
NY NOW
展示会の規模は他と一線を画す。全世代をカバーしたブランドの展開であるが、Shoppe Objectと比較するとやや上の世代がターゲット。全体としては、重厚感、正統派、高品質イメージが強い。ブランドが世界中から集まり、ひとつの展示会でカバーする領域が非常に広い。
ブランドサイズも比較的大きいイメージで、すでに知名度があるブランドも多い。インターナショナル系(アジア、南米、ヨーロッパ)は、Nowのほうが多い。
商材としては、商品ラインナップが多いブランド(バラエティーに富んだ提案ができるもの、提案の方向性がいくつかあるもの)や、トラディショナルなスタイルのブランド(≒トレンドに左右されない固有価値が強いもの)は、nowのほうが相性が良さそう。また、会場が大きくブランド数も多いため、PR/プレゼンテーションの質がより必要とされる。
繰り返しになりますが、双方の展示会それぞれに特徴があり、どちらが良い、ということではなく、自社のブランドや商材、目指すべき販売戦略にとってどちらに出展すべきかを総合的に判断すべきと改めて感じました。アメリカの展示会についての現地情報や、出展に関するサポートについてご相談、お問い合わせはお気軽に問い合わせフォームよりご連絡ください。今後も現地でのリアルな展示会の様子をお届けしていきます。皆様のご参考になれば幸いです!
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