<2021年決定版①>アメリカのオンライン展示会
目次
2021年現在のアメリカの展示会状況
デジタル展示会の分類
プレゼン重視型
ソーシャルネットワーク型
オンラインストア型
まとめ
1.2020年、現在のアメリカの展示会状況
2020年3月に全米で緊急事態宣言が発動され、その後ニューヨークをはじめ多くの都市で医療崩壊、感染者拡大と、類を見ない甚大な影響をおよぼしたコロナウィルス。人々の生活や行動範囲は大きく制限され、消費、医療、教育といったあらゆるものがデジタル化へ一気に移行しました。今まで新規開拓、既存顧客との出会いの場であった展示会も、その影響を多大にうけ、年内そして来年年初のあらゆる展示会が軒並み中止、中止、中止。。
私たちもコロナの前までは年に10回程度、全米ないし国外のあらゆる分野の展示会に出展し、今年のホリデー、来年の営業計画も大きく崩れることになりました。
そこで、悩めるブランドを救うべく、(同じく困窮している)各展示会主催者も一気にデジタル展示会の開催に踏み切っています。アメリカでは知名度の高いギフトの展示会NY NOW、おもちゃ業界で最大規模を誇るToy Fair、世界的な日用品の展示会Ambiente 、全米ペット業界の最大の展示会Super Zoo など。分野を問わず、様々な種類のオンライン展示会が実施されています。
実は数年前つまりコロナの前から、展示会に出展するたびに「あれ、あのブランドが今回から出てないな」、「あのバイヤー、もう展示会いかないって言ってた」というような、いわゆる “展示会離れ” はじわじわ広がっていました(とくにファッション、デザイン系商材)。Amazon をはじめとするオンラインストアが隆盛する一方で、デパートをはじめとした小売店舗が衰退しているのと同じように、デジタルと周辺テクノロジーの普及に伴って、リアルな展示会も少しずつ影響力を落としていたのは間違いない事実でした。
バイヤーは時間と費用を投資して、一日中歩き回るよりも、オンラインでマーケットの支持を集めている市場性とマーケティング力のありそうな新たなブランドをリサーチして、直接アプローチしたほうが効率的ということに徐々に気が付きだしています。一方でブランド側も数日間の展示会に数万ドル費やすのであれば、その分をデジタルマーケティングに費やしていったほうが、DtoC 、そしてひいてはBtoB のネットワークを形成できるのでは?と思いだしている。
そうした現代の流れの中で、上述したバイヤーネットワークと市場認知度のある展示会がデジタル展示会を主催することは、とても理にかなっているのです。
弊社もいくつかの展示会に現在進行形で出展していますので、今回はそうしたアメリカのデジタル展示会の概要と、実例をいくつかご紹介し、今後の展望についての考察をお話したいと思います。
2. デジタル展示会の分類
まずオンライン展示会といってもすべてが同じではありません。各展示会主催者が使用しているシステム(自前システムではなく、外部システムをカスタム活用している場合が多い)によって、大まかに以下の3つの特性に分類できます。
① プレゼン重視型
② ソーシャルネットワーク型
③ オンラインストア型
通常の展示会出展の主な目的である「商品やブランドを市場に発信する」、「バイヤーとの関係を構築する」、「オーダーを獲得する」の三つの中で、どの点をどういったパランスで重視しているプラットフォームで、どのシステム特性を強く持っているかどうかを見極める必要があります。これによって、出展準備、ページのセットアップ、商品情報の見え方、運用・活用方法が全く異なります。自社が出展するプラットフォームはそれぞれどの点を重視しているのか、そしてそれが自社の出展目的に合っているのか、最大効果をあげるためにはどのような運用体制を組めばいいのかということを事前にしっかり検討する必要があるのです。
それでは一つずつ特性を具体例を踏まえて、説明していきたいと思います。
3.プレゼン重視型
商品やブランドをしっかりと発信することに主眼を置いています。動画や写真による視覚的なプレゼンテーションを行うことができます。こうしたバーチャルブースはプレゼンを重視する一方、オーダーの受注や、バイヤーとのインタラクティブな関係構築は難しい場合が多いです。
Super Zoo が提供するWPA365などは、まさにバーチャルの展示会ブースの設定ができ、直感的に操作が可能。
左記はファッション系の有力展示会コーテリー展 Coterie のデジタル展におけるブランドページ例。Nuorder という世界最大級のファッションを中心としたブランド向け、バイヤー向けのデジタルプラットフォームサービスと組んで2カ月にわたり開催されました。(参考:世界最大級のオンライン展示会が誕生、「NuOrder」とInformaが提携)
ファッション系のデジタルプラットフォームはこのように、写真や動画、デザインで世界観を伝えられるような仕組みになっている場合が多く、自由にコンテンツを設定できる分、設定にコストと時間がかかります。
【基本情報】
出展審査:費用を払えばアカウント、ページ設定が可能。
現地流通販売体制:不問
出展期間:展示会ごとの開催期間に左右される。
出展費用:固定費用
運用方法:自己管理により最新情報にアップデートする。問い合わせやオーダーは都度ポータルページで確認し対応する。
ビジネスのポテンシャル:大小専門店
目的例:新規販売先の開拓、市場への情報発信
4.ソーシャルネットワーク型プラットフォーム
続いてSNS 型ですが、現在も開催されているNY NOW がまさしく良い例といえます。SNSのように、出展者がプラットフォーム上でバイヤーをサーチし、メッセージを送り、連絡先や情報の交換をすることができます。アカウントページで、テレビ会議のスケジュールと運用もできるため、シームレスにバイヤーとセールス個々人がコミュニケーションをとることができます。
このように、出展者側がセールスピッチを積極的に多くのバイヤーや関係者一人ひとりへ送信することができるため、能動的にプラットフォームを活用でき、運用次第でよい結果が得られる可能性が高まります。
NY NOWはコミュニケーション、マッチメーキングに重点を置くSwapcard を使用していたため、ブランディングや商品情報発信の機能性は低い面もあり、コンタクトが繋がったバイヤーに対して、次のステップとしていかに良いプレゼンを用意できるかがカギになりました。
【基本情報】
出展審査:費用を払えばアカウント、ページ設定が可能。ただし、事前の審査がある。
現地流通販売体制:不問
出展期間:展示会ごとの開催期間に左右される。
出展費用:固定費用
運用方法:自己管理により最新情報にアップデートする。問い合わせやオーダーは都度ポータルページで確認し対応する。バイヤーがアクティブ(プラットフォームに滞在している)期間にどれだけコミュニケーションできるかが大事なので、リアルタイムで対応できるスタッフが必要。
ビジネスのポテンシャル:大小専門店
目的例:バイヤーや業界内でのコネクション作り、新規開拓
5.オンラインストア型プラットフォーム
オンラインストア型は、オーダーを獲得することを主眼に置いていますので、バイヤーはプラットフォーム上で支払いまでのプロセスを完結することができます。売り上げをプラットフォーム上で作ることができる点でビジネスにつながりやすいですが、オーダー金額は平均で $300-500程度と、小さな小売店向きです。出展ブランドは自社のアカウントページを与えられ、基礎ブランド情報、写真、ストーリー、最低オーダー条件等の基本的な情報を設定、各商品の登録を行い、運用がスタートします。通常オンラインストア型は掲載にあたり、事前の審査があり、プラットフォームの世界観に合っているかどうか、プラットフォーム側がキュレートを行います。(これが意外と厳しい審査なので事前にWeb siteやカタログなどのデザインテイストをなるべく合わせておくといいと思います)
ここではギフト関連で最も有力なオンラインストア型プラットフォーム、FAIRE 紹介します。実際弊社もいくつかのブランドを掲載(出展)していますが、新規オーダー、リオーダーがコンスタントに入ってきてうまく機能しています。
アカウントを作成した小売店は、オンラインショッピングを楽しむように気楽に好きなブランドの商品を卸価格で購入できます。決済もFAIRE が代理で行います。バイヤー側も、出展者側も、見た目のデザイン、操作性がすごくわかりやすく簡単に管理、買い付けができます。
しかも小売店は
①初回オーダー後60日以内であれば送料無料でReturn 可能
②二か月後払いが可能
というメリット付き!展示会のように直接商品をみることができなくても、返品可能なので、気軽にオーダーができます。ミニマムの設定はブランドごとに異なりますが、おおむね$200程度なのでそれほど大きいハードルではないので、小さな小売店には助かるサービスが多く用意されています。
もちろんブランド側には利用コストがかかります。コミッションとして、初回オーダーはオーダー総額の25%、二回目以降は15%が自動的に回収したお金から差し引かれて入金されます。小さくはないですが、展示会に出展すること、セールスレップを使うこと(レップのコミッションは大体5~15%)を考えると効率的に思います。
他にも業界によっていろいろなプラットフォームがあります。これからいろいろ試してみようと思っているので、以下のものはまだ使ったことがないですが参考まで。
【基本情報】
出展審査:難易度高め。プラットフォームがキュレートする。
現地流通販売体制:現地代金回収体制が必須。(通常Tax 書類の提出が求められる)
出展期間:半永久的
出展費用:売り上げに応じたコミッション制 6-15%
運用方法:初期設定はブランド側が行う。シーズン毎などで更新を行う。ニュースレターやキャンペーンを作成できるので都度活用する。
目的例:主にデザイン性の高い商品を扱う小さな小売店などの新規販売チャネル開拓
6. まとめ
これ以外にも様々な業種、カテゴリでデジタル展示会が開催されています。おもちゃ業界だと Shoptoy365, Astra Camp、カタログ式プラットフォームBrandboom, Nuorder、世界最大の日用品の展示会 Ambiente が主催するThe International Consumer Goods 、さらに大規模なものになれば Alibaba など、あげればきりがないですが、、アメリカだけでなく、世界中に無数存在しています。そしてコロナ後のBtoB のビジネスにおいて、主力の新規チャネル開拓ツールになることは間違いがないでしょう。それぞれが上記にあげた形式に必ずしも当てはまるわけではなく、いくつかの特徴を持ち合わせている場合がほとんどですので、目的や状況に従ってうまく使いこなすこと。そして、DtoC向けで培ったコンテンツマーケティングやアドバタイズメント(スポンサー広告枠での露出等)ノウハウを最大限活用して、世界に情報を発信していくことが、将来のビジネスチャンスを広げていくことにつながっていきます。
Bous ではこれからも、アメリカだけでなく、ヨーロッパ、アジア、中東などのこうしたデジタル展示会への積極的な出展を行い、日本製品の世界チャネル販売拡大に向けて取り組んでいきます。新たなプラットフォームについてはまた改めてご紹介できればと思います。