<現地レポート①>コロナで変わるアメリカ
世界中でコロナ(Covit-19)を軸に、人々のライフスタイルや企業のビジネに大きな変化が始まっています。以下はアメリカと日本の感染者数及び死者数の推移になります。
アメリカ感染者数:3301万人(日本71万人)
アメリカ死亡者:58万人(日本12千人)
* いずれも2021年5月22日現在。
上の数字から分かるように、コロナによって人口差3倍でコロナを取り巻く数字は46倍という考えられない数字です。こうした事態からアメリカで日本以上に大きな社会変化が起きています。その主な変化は人々の価値観そしてインターネットテクノロジーにみられ、その変化によって人々の行動、消費活動が大きく変化しています。以下に特に代表的な変化をご紹介します。
広まる新たな価値感
上述のとおり、コロナパンデミックはほとんどのアメリカ人にとって衝撃的で身体的精神的な申告な影響を及ぼしました。2020年の3月から本格的なシャットダウン後、人々は孤独や、感染への恐怖、身近な人達を失う悲しみを経験した人々の価値観の変容を一部ご紹介します。
家族やコミュニティーの重要性の見直し
仕事や学校で日々を過ごす必要がなくなった今、配偶者、子供、その他の家族とより多くの時間を過ごすことが出来るようになりました。家族とより多くの時間を過ごすことにより家族の絆は深まったと感じている人が多くなりました。家族と過ごす時間が増えたことにより、よりお互いを尊重しあい感謝する機会が増えたのです。家族間の相互理解の深まりにより、よりストレスを感じにくい家族関係が築けるようになりました。
加えて、ソーシャルメディアが人々の社会問題への意識をさらに高めました。Black Lives Matter (黒人の人権運動)はその一例といえます。今までは「見ないふり」をしていた残酷な事実がソーシャルメディアを通して一気に広がり、人々の目の前に自分のコミュニティーの出来事として突き付けられたのです。特にジェネレーションZやミレニアルズといった若い世代の人たちの間で、そうした社会問題への関心が沸き起こりました。Black Lives Matterについてはまだまだ根本解決の糸口は見えない根深い問題ですが、その熱はいままで傍観者だった多くの企業や政治家を動かす結果となりました。問題のある警察官への処分の見直しや、司法や行政の制度の変革、企業の同活動への募金などによるサポートなど。今や彼らは自分たちが社会を変えることができるという自信、そして社会、政治、企業を監視するべきだという正義感をもっており、Asian Hate (アジア人への差別)や、女性の権利向上といったあらゆる社会問題への意識がいまだかつてないほど高まっていると言えます。
2. サステイナブルへの意識
アメリカでは今回のパンデミックが行き過ぎた資本主義や消費社会によるものだと考える人は多くいます。そのため消費者は、機能的価値や情緒的価値だけではなく、サステイナビリティや社会・ローカルへの貢献といった社会的価値を企業に期待しています。
今までエコフレンドリ―やサステイナブルというキーワードは一部のトレンドに敏感の人たちの間のものだったのですが、今はアメリカ人の多くが、企業や商品にエコで、サステイナブルなビジネスの展開を求めており、8割の消費者が気候変動に対するブランドや商品の取り組みを求めるという統計もあります。右記の図はサステイナブル商品のアメリカにおける市場成長予測です。黒線がコンサバティブな予想だがいずれにせよ大幅な伸びが予測されています。
サステイナビリティへのアプローチは、特にファッション、アパレル分野で注目され、市場の伸びが予想されています。人々は、大量消費のために作られた商品を避け、品質が高く長く使うことができるものに購買をシフトしはじめています。
ミレニアルズに絶大な人気を誇るサステイナブルな生産、流通に徹底し、高品質なベーシックアイテムを低コストで提案している Everlane
エコ、サステイナブルな素材と履き心地にこだわったスニーカーブランド allbirds 。クラウドファンディングで大成功し、全米で有名に。
進むデジタル・バーチャル化とソーシャルディスタンス
コロナによって人々は物理的または社会的な距離をおくことを余儀なくされています。オンラインプラットフォームの利用率が上がり、仕事はリモートワークがスタンダード化され、学校や教育もオンライン化されました。病院は仮想クリニックへと変化し、就職の面接、大学のキャンパスツアーでさえオンラインで行われるように。アメリカのヘルスケアシステムの多くは、コロナウイルスによって課せられる負担の一部を軽減するためにデジタル化されました。遠隔医療と遠隔診断は、患者が自宅で医療アドバイスと診断を受けるのに役立つため、診療所や病院に来る必要は無くなったのです。
上記はコロナ前後のリモートワークの割合の比較です。ブルーがコロナ前、ネイビーがコロナ後。週に5日以上はリモートになったと回答した人はコロナ前は17%であったのに対し、コロナ後には44%にも上っています。ワクチン接種後もオフィスに戻らずリモートワークを続ける人は多くいます。Gartner survey のアンケートによると80%の企業が社員にパートないしフルタイムのリモートをコロナ後も許可するつもりがあると答えており、社員も65%はリモートで、31%はハイブリッド(出社とリモートの両方)を希望しています。企業側はリモートでも生産性とチームワークを維持できるシステムを整えること、社員側は自宅でも集中して快適に仕事ができる空間づくりを整えることが重要になっています。
デリバリー、カーブサイドピックアップ
アマゾンだけでなく、ありとあらゆるものがデジタルでオーダーし、自宅まで届くようになりました。今までは店頭で買っていた食料品や、レストランの食事も例外ではありません。パン一つから、携帯アプリで玄関に届けてくれるのです。非接触型の宅配システム Ubereats、doordash、Grubhub、Postmatesなど多くのアプリサービスはパンデミック下で一気に普及し、浸透しました。
事前にオーダーし、車に乗ったまま商品をPick up するCurbside Pickupのサービスもコロナ下で一気に浸透しました。時間を節約しつつ、自分の好きなタイミングで商品を受け取ることができるこのサービスは今後も普及していくと予想されています。
2. エンターテイメント
エンターテイメントは完全にオンライン化されたと言えます。美術館や演劇はバーチャルでも楽しめるようになりました。中でもストリーミングサービスは隆盛を迎え、Disney +は、5か月で、Netflixが達成に7年かかったサブスクリプションベースを構築しました。話題の新規映画は、映画館での放映より前に続々とデジタルストリーミングで放映が開始され、購読者の確保に各社躍起になっており、まさにStreaming War (ストリーミング戦争)が起こっています。
3. ブランドとのつながりの進化
パンデミック以降、インターネットを通じたデジタルマーケティングがアメリカのマーケティングの中心軸になりました。ブランドは人々とのつながりを主にSNS、Email、チャットで求めるようになり、消費者との距離はかつてないほどに近づいています。
その中でも重要なマーケティングツールの一つはビデオです。YoutubeやTiktok、Instagram のLiveやReel で動画を大量に消費している消費者は、動画の持つ手軽で豊富な情報量、リアルさを享受しています。また、ビデオマーケティングのキーワードとしては、臨場感を味わえ、よりブランドとの距離感を近く感じることができる「ライブ」、インフルエンサーによる使用やレビューをショートビデオに収めた「リアル」な声、そしてブランドが発信する高画質で心に刺さる「ストーリー」が重要になります。
ブランドの作成、発信するきれいな動画だけではなく、リアルな消費者が使用して感想を伝える動画が消費者にとっては見ていて心地のよいものになりつつあるといえます。
このように、アメリカは新しい社会を創造しています。5月22日現在アメリカのワクチン接種率(少なくとも1回)は48.6%であり、ニューヨークやカリフォルニアはあらゆる規制を解除しつつあります。失業率も大幅に改善し、ホリデーに向けた消費も前向きに戻ると予想されています。一方では社会科学者の中には、今回のコロナパンデミックは、産業の「利益至上主義」を見直す契機になると予想しており、コロナ後は、利益を追求するだけでなく、利益を共有するという考え方に変えるべきという意見が大きくなっています。世界中の企業が、世界が完全に繋がったという事実を確認し、その対策と進むべき道を考える時代になったといえます。