ファストフードの勝者、ChipotleとChick-fil-Aの戦略
アメリカのファーストフードの代表格のマクドナルドや、アメリカ人みんな大好きスターバックスが、4月の決算で最新の四半期における売上の減少を発表し、長引くインフレによってアメリカの消費者がついに支出を制限しだしたか?というムードが流れています。前回のブログでも述べたように、実際に私自身も最近はチップを含めると一人当たり $40を超えてくるような外食の回数はここ数カ月極端に減りました。。
今回のアメリカ飲食業界の二台巨頭の売上高減少のニュースを横目に、インフレが続く飲食業界でも好調の二社があります。メキシコ料理のファストフードChipotleとフライドチキンバーガーChick-fil-Aです。現在の消費者に圧倒的に支持される二つのファストフード企業の戦略と、愛される理由について分析します。
目次:
1. Chipotleの戦略 “ 健康的で安全なメキシカン”
2. Chick-fil-Aの戦略 “ とにかく美味しく、サザンホスピタリティで愛される店舗運営”
3. まとめ
1. Chipotleの戦略 “ 健康的で安全なメキシカン”
1993年にスティーブ・エルズによってデンバー、コロラド州で創業されたChipotleは、それまでTaco Bell のような脂っぽくあまり健康的でないイメージのメキシコ料理のファストフード業界に、野菜たっぷり新鮮で、オーダー時にカスタマイズ可能というアプローチを導入し、ファストフード業界を革新をもたらしました。Chipotleの急速な成長に貢献したいくつかの主要な要因を見ていきます。
① 食材の品質にこだわる:
Chipotleは、高品質で持続可能な原材料を提供することにコミットしており、「食材にこだわった誠実な食事」というコンセプトを打ち出しています。2015年に続けて食中毒をだし、一時業績を著しく減少させましたが、それ以降徹底した衛生管理と、透明性の高い食材の選定を推し進めています。適切に育てられた肉、オーガニックの野菜、非遺伝子組み換えの原材料を優先することで、より健康的で環境に配慮した食事を求めるミレニアルズ世代以降の消費者に共感を呼び起こしました。
② カスタマイズとスピード:
Chipotleのカウンターでの食材を見ながらオーダーしていくスタイルによって、顧客は様々な新鮮な食材から、グリルチキンやバルバコアなどのタンパク質オプション、サルサ、グアカモーレ、トマトやレタスなどのトッピングまで、自分好みのメニューをカスタマイズできます。メニューと食材が極めて少ないため、この流れもスピーディー。このカスタマイズが1から10まで可能なオーダー方法は、迅速で便利なだけでなく、パーソナライズされた食事体験を求める顧客に支持されています。
③ 忠実な顧客基盤の育成:
Chipotleは、戦略的なマーケティングキャンペーン、デジタル革新、そして強力なブランドアイデンティティによって、熱心な顧客基盤を作りました。特に健康を意識するミレニアル世代に焦点を当て、ソーシャルメディアプラットフォームを活用することで、ターゲットオーディエンスとのつながりを保ちました。コロナ後、オンラインでのオーダーシステムもいち早く導入し、売上の向上に役立っています。
④ 持続可能性へのコミットメント:
Chipotleは、廃棄物削減、水の節約、地元の農家の支援など、メインの顧客層であるミレニアルズの懸念事項であるサステナビリティ―への取り組みも進めてきました。土に還る包装からエネルギー効率の向上まで、同社は環境保護において業界をリードしています。
2. Chick-fil-Aの戦略 “ とにかく美味しく、サザンホスピタリティで愛される店舗運営”
1946年にジョージア州ヘイプビルでS. Truett Cathyによって創業されたChick-fil-Aは、その象徴的なチキンサンドイッチと顧客サービスへの確固たるこだわりで有名になりました。主なポイントを見ていきます。
① 代表的なチキンサンドと一貫性:
Chick-fil-Aのシグネチャーチキンサンドイッチは、ふわふわのバンズに挟まれたフライドチキンに、ピクルスが乗ったシンプルなものです。創業当時からこのバーガーのおいしさに徹底してこだわっており、新鮮な原材料から丁寧な調理プロセスまで、同社の品質と一貫性への取り組みは、忠実なファンを獲得しました。
② 企業の価値観とコミュニティへの参加:
Chick-fil-Aの企業の価値観は、創業者のトルエット・キャシーのキリスト教の信念に根ざしており、文化とビジネスに大きな影響を与えています。飲食店にとっては最も重要となる日曜日の閉店や、地域コミュニティへの積極的な参加など、同社は利益のみならず、地域社会にポジティブな影響を与えることも重要視しています。
同社は株式を非公開にし、敬虔なクリスチャンを母体にしており、慈善事業への参画や寄付活動にも熱心です。一時、LGBTQ に対して反対するコメントを出したことで不買運動やデモが起こったこともあり、それ以降は多様性を意識した取り組みを行っています。
③ 独自のフランチャイジーモデル:
Chick-fil-Aのユニークなフランチャイジーモデルは、「オペレーター」として知られる独立したフランチャイジーが店舗を所有・運営することを重視しています。この分散型のアプローチは、フランチャイジーが自分のビジネスに責任を持ち、顧客満足度を優先することを可能にし、チェーン全体で一貫して高いレベルのサービスを提供しています。オペレーターになるべき道は狭く、独自のプログラムに通った人だけがフランチャイズとして店舗を運営できるようになります。
④ ブランドロイヤルティーと温かな店舗での顧客体験:
Chick-fil-Aの優れた顧客体験を提供することに対する努力は、強力なブランドロイヤルティと口コミマーケティングを育みました。家族連れをターゲットにしているため、店舗は明るく清潔で楽しい雰囲気が徹底しており、店舗の周辺も安全な立地が多いのも特徴です。店舗ではスタッフによるフレンドリーで温かい挨拶や効率的なサービスなどによって、Chick-fil-Aの店舗に訪れた顧客に忘れられない体験を提供することを重要視しています。
3. まとめ
ChipotleとChick-fil-Aは、商品を限定することによって質の高さを保ち、独自のサービスで顧客満足度を高めることを徹底しています。Chipotleの新鮮でカスタマイズ可能なメキシコ料理へのアプローチや、Chick-fil-Aのサザンホスピタリティと象徴的なチキンサンドイッチなど、これらのブランドは競争の激しいファストフードの風景で独自のアイデンティティを築き上げています。
いずれの企業も、過去の大きな過ちを乗り越えながら、「信頼性」を重要な価値として据えて、美味しい食事と満足度の高い顧客体験を提供市続けていることが成功の秘訣といえるでしょう。
(参考)
https://www.cnbc.com/2024/05/01/starbucks-mcdonalds-yum-earnings-show-consumers-pulling-back.html
https://www.investopedia.com/articles/active-trading/041315/why-chipotle-so-successful-popular.asp
https://www.eater.com/2015/3/4/8149323/chipotle-chick-fil-a-papa-murphys-papa-johns-survey-favorite-fast-food-chain
https://www.businessinsider.com/how-chick-fil-a-took-over-america-2019-8
https://newsroom.chipotle.com/2018-09-24-Chipotle-Launches-New-For-Real-Campaign-Placing-Its-Real-Ingredients-In-The-Spotlight#assets_all