渦中のTikTok、アメリカにおける影響と課題について

 ジェネレーションZやミレニアルズを中心にアメリカでのユーザーを着実に伸ばし、今年から販売プラットフォームとしてTiktok shop のサービスもローンチするTikTok 。動画の撮影、加工、投稿が簡単かつ、中毒性のあるショート動画を配信し続ける同プラットフォームは、これまで指示と不支持の両極端の注目を集め続けています。4月にはバイデン大統領が全国的なTikTok 禁止令にサインしたばかりで、一体今後TikTok はどうなってしまうのか?マーケターとしてもかなり気になるTikTok のアメリカでの動向と今後をまとめてみました。
 

目次:

1.       TikTok の魅力
2.       米中の対立とTikTok
3.       TikTok の未来



 

1.       TikTok の魅力

 SNS大国であるアメリカでも2023年10月度でTikTok は現在利用者数でWeChat に続き6位、1.7 億人 が利用するSNSになりました。利用者層はZ世代と、ミレニアルズの中でも若い世代に集中しており、今後消費の主役になる層に広く圧倒的に浸透しているのがわかります。デュエット、ステッチ、ハッシュタグチャレンジなどの機能は、ユーザーとアカウント間の、他のプラットフォームにはない高いエンゲージメントを促進します。たとえば、老舗マットレスメーカーSimmonsの#Snoozzzapaloozaチャレンジは100万人以上のユーザーを引き付け、新たな世代からの認知を飛躍的に向上させました。いわゆる「バズる」キャンペーンを作り出すことができれば、こうした老舗のブランドであっても認知向上が期待できます。


 2021年、アメリカのマーケターの42%がインフルエンサーキャンペーンにTikTokを利用しており、ビジネスツールとしてのポジションも確立しています。ブランドが作りこんだコンテンツよりも “リアル” なコンテンツのほうがエンゲージメントや反応が高い傾向にあり、インフルエンサーとのタイアップ効果がでやすい媒体でもあります。その他のSNSプラットフォームとは異なり、TikTokはリアルで創造的なコンテンツが評価される傾向にあります。「広告ではなくTikTokを作る」ことで、エンゲージメントの高い、共感を呼ぶことができます。 
 さらにTikTokはソーシャルコマースのブームを促進しており、商品などをレビューする際につけるハッシュタグ #TikTokMadeMeBuyIt(Tiktokが買わせたもの) 現象は80億回以上の視聴回数を記録しています。TikTokユーザーのほぼ半数がアプリのコンテンツを見た後に購入行動を起こしており、前述のTikTok shop はそれを促す大きなポテンシャルを期待されています。

TikTok は上記のようにユーザーとアカウントとの密接でリアルな結びつきを重要視する特性があるため、去年ごろまでは「広告向きではない」SNSと認識されてきましたが、現在TikTokの広告事業は急成長しており、2024年には120億ドルの収益を生むと予測されています。上記のようなバズる投稿や仕掛けによるリードジェネレーションやインタラクティブなアドオンなど、新しいマーケティング手法によるクリエイティブなマーケティング方法を次々に生み出す場になっています。

 以下TikToker のベスト3。彼らのコンテンツのほとんどが自作で撮影しているような(自撮りも多い)動画が多く、本人たちも見た目が完璧なセレブというよりは、等身大の現代の若者という印象を受けます。

NO1 のイタリアのTikToker  https://www.tiktok.com/@khaby.lame?lang=en  ライフハックを皮肉るコミカルな動画が人気を博した。

NO2のアメリカのhttps://www.tiktok.com/@charlidamelio?lang=en  リップシンク動画がバズり、Z世代のカリスマとなった。

NO3のインフルエンサー https://www.tiktok.com/@bellapoarch?lang=en  シンガーだがリップシンクで有名に。

 

2.       米中の対立とTikTok

 さて本題です。強まる米中対立を背景に、アメリカ政府は、特にTikTokの母体となっていByteDance、そしてその背景にいる中国政府とのかかわりに対して、国家安全保障リスクを懸念しています。アメリカ政府の主張は以下の三点。

  1. データプライバシー:ByteDanceが中国政府に対して機密ユーザーデータを提供するよう強いられる可能性があること。

  2. フェイク情報の流布:TikTokが誤情報キャンペーンや中国の外国影響ツールとして使用される潜在的リスクがあること。

  3. コンテンツの検閲:中国共産党の圧力により、TikTokがコンテンツを検閲したり、中国に有利な情報配信を推進するリスクがあること。

    TikTokがアメリカで存在感を強め始めてから、民主党共和党の両党の議員からの規制を求める声が高まっています。通常民主党、共和党は主義や政策が大きく異なることがほとんどなのですが対TikTokに関しては結束して締め出しにかかっています。これを受けてByteDance の代表が議会公聴会で5時間以上責められ続けたりと、もはやイジメに見えなくもないレベルになっています。。個人的にはTikTok は、発信者が当初想定していたような方向や結果にとどまらず、個人個人が作り出すコンテンツによって想定しきれない巨大なインパクトをもたらす爆発的な力を持っているなぁと感じますし、そこに底知れぬ恐怖感と危機感を政治家の皆さんは感じているんだろうなと。実際に2020年にはトランプ氏の政治集会に関わるムーブメントを引き起こし、そこから一気に政治家の関心が強まったようにも思います。


3.       TikTokの未来

 結論から言えば、現時点でTikTokがアメリカで完全に禁止される可能性は低いという見立てが大半です。最近の司法や行政の動きはByteDance に対して、TikTokの米国での運営権を売却を強制するか、完全禁止という厳しい措置を提案しています。立法が上院を通過する可能性があり、それが成立すれば、TikTokは270日以内に非中国の買い手を見つけるか、米国での禁止が実施されることになります。しかし、これらの動きは一方では言論の自由に関する的な課題を残しており、上記のようなリスクが明確に顕在化されていない限り、この前例のない法律を正当化することは難しいと言われています。

 2024年現在、TikTokのユーザーは拡大を続け、米国内だけでも1億7000万人を超えています。TikTokはアメリカの人々の日常生活に深く根ざして(しまって)おり、音楽、映画、ニュースのコンテンツの在り方さえもを変えながら、多くの若者にとって重要なコミュニケーションツールとなっているのは間違いないからです。TikTok をマーケティングに活用しつつ、躍起になっているアメリカ政府と、市民権を得たTikTok との闘いに注視していこうと思います。

Previous
Previous

2年間使ったものでも返品Ok?! 日本では非常識なアメリカ小売りの常識

Next
Next

ファストフードの勝者、ChipotleとChick-fil-Aの戦略