<現地レポート④> アメリカで大人気、ジャパニーズデニムの底力
「Made in Japan」というワードを聞くと、「High Quality 高品質」、「Craftsmanship 職人技」などというイメージを持つアメリカ人は比較的多いのですが、特にデニムはそうしたイメージがとても広く浸透しています。
デニムというとアメリカ発祥のイメージが強いですが、昨今ではデニム好きの人の中では「デニムといえば絶対 JAPAN!」という共通認識ができあがっており、その人気と知名度は不動のものになりつつあります。今回はアメリカにおけるジャパニーズデニムの実情についてまとめてみたいと思います。
目次
1. 市民権を得た「Japanese Denim」
2. Denim は日本製、製造はアメリカが最高
3. まとめ
1. 市民権を得た「Japanese Denim」
私たちが扱う日用品やおもちゃ業界においては日本製であることは、Made in Chinaよりはアドバンテージがあるにせよ、私たちちょっと悲しいですが日本人が期待しているよりもそれほど大きな武器にならない場合が多いのがアメリカ市場の実情です。これは日本の文化や歴史的な技術を尊重するアジアやヨーロッパとは異なる点かもしれません。誤解を恐れずいうと、多くのアメリカ人は自国以外のことはそれほど気にしていないし、特別好意的にとらえていない。当然ですが自国が一番。
しかし今回ご紹介するデニムは違います。当然日本のデニム生地は高いのですが、使われているのはこだわりの小さなブランドだけではなく、アメリカの有名ブランドCalvin Klein にはじまり、D2Cの王者Everlane、アメカジの覇者 J Crew など多くのブランドが、わざわざ 「このジーンズは“Japanese Denim” を使っています!」と訴求するくらい、その価値やマーケティング効果は高く、品質への信頼度が確立されていることがわかります。
2021年のアメリカ単体のジーンズ市場サイズは 18.2 ビリオンドル(約2.5兆円!)といわれ、国民服として堅調に市場を伸ばしています。Denimhead(直訳だとデニム頭・・・)と呼ばれているマニアも多いデニム業界ですが、そんなDenimheadの間でも日本製のデニム生地は大人気で、いくつものマニアックなインフルエンサーのブログなどでその良さが語られているほどです。
以下では日本のデニムの聖地倉敷の工場を訪ねたほどのマニアによる日本のデニムの良さが写真や動画を踏まえて、歴史から織り方、染め方、金具の精巧さなど細部にわたって熱心に伝えられています。こうして熱心に日本のデニムの良さを伝えてくれているDenimheadの存在は、日本デニムのアメリカでの市民権獲得に一役買っていることは間違いないでしょう。
2. デニムの生地 は日本製、製造はアメリカが最高
上記の記事ではデニム生地の製造から、ジーンズにする縫製までを日本で行われているものを紹介していましたが、丈夫さを重視する人たちの間で特に 「デニムは日本製、縫製はアメリカ」というのがメインストリームのようです。先ほど冒頭で “Made in Japan” のイメージは品質や職人だとお話しましたが、 “Made in the USA” は多くのアメリカ人にとってさらにたくさんの良いイメージを彷彿させます。日本でも “日本製” というマークが商品パッケージについている場合が多いですが、
それは消費者に品質や信頼感、「なんとなくイイもの」というイメージを持たせるためですよね。アメリカでもそれは同じですが、少し違うのはMade in USAが表現する最も重要な点は、Durability 、Longevity といった丈夫さや長持ちする「商品のタフさ」というイメージを伴う点です。また昨今では、ローカルで作られているということをアピールすることでローカルコミュニティーの雇用を守ったり、移動距離をすくなくすることで地球環境に優しいということを訴求するポイントにもなっています。数年前、トランプ氏が大統領に就任してMAGA (Make America Great Again) が話題になっていたときは、リベラルなアメリカ人にとって “Made in USA” はあまり良い印象がなかったようですが、最近ではこうした実質的な理由によって総じてアメリカ人にとって、Made in USAはプラスのイメージ、場合によってはブランドのコアバリューの一つになり得る要素になっています。
日本のセルビッジデニムを使い、アメリカで製造しているBrave Star。元々はCone mills社のデニムを扱っていたが、閉鎖に伴い現在は取り扱いデニム商品のほとんどはクラボウ社、日本綿布社からの日本倉敷のセルビッジデニム。Denimhead的なマーケティングの他、価格が手ごろなのも人気の理由。
3. まとめ
セルビッジデニムは、通常の製造よりも5倍以上の時間がかかり、専用の織機を操作するのにも長年の経験と技術を必要とします。経済的合理性を追求したアメリカの元祖 Cone mills 社はじめデニム製造企業はシャトル織機を軒並み廃止しましたが、日本はこうした技術を長年大切に継承し続けてきた結果、”ヴィンテージデニム=日本のセルビッジデニム” というイメージが定着したといえます。
アメリカのDenimheadがデニムに夢見る「ガシガシ毎日履き続けても耐える頑丈さ」や「使い込むことで自分独自デニムになる」といった情緒的な要素が、セルビッジデニムの持つ独自の風合い、日本の歴史ある職人技術と高い品質への信頼感といった点とうまく融合した点も大きいのではないでしょうか。Denimheadの間では、同様の理由で、デニムと親和性の高いアイテムであるレザー製品(ブーツや小物)も実は日本の革が人気らしいので、今度はそちらの実情や背景についても調べてみたいと思います!