<体験レポート②> Z世代に人気のタトゥーブランドを試してみた結果

ジェネレーションZ世代を中心に人気の高い、タトゥーのDtoC ブランドInkbox https://inkbox.com、年甲斐もないですが、娘たちとも楽しめそうだなと以前より気になっていたので実際に購入してみました。D2Cブランドとして、2015年にカナダのトロントで設立し、現在は100名以上の従業員を抱え、167か国に販売しているInkbox社。タトゥーといっても、テンポラリータトゥーで1-2週間程度で少しずつ薄れきえるものです。様々なデザインがあり、スパイダーマンなどのマーベルキャラクターやPowerpuff Girls などのキャラクターとものコラボ商品もあり、デザインを選ぶのもとても楽しいです。今回は購入からトライアルまでの実体験を考察し、Z世代に向けたマーケティング戦略の一例をご紹介します。

 

目次

1. Inkbox の人気の理由は? 
2. ブランドの息遣いを感じるコミュニケーション戦略
3. まとめ


 1. Inkbox の人気の理由は?

トロントのダウンタウンで、Tyler とBraden兄弟が小さなアパートで始めたInkboxは 、コミットメントせずに自由にタトゥーを楽しむというコアバリューをもって商品を展開しています。人気の理由としては、①トレンド性の高いデザインが豊富 (10022種類 *2022年11月現在)、②オリジナルデザインが作れたり、自分で描ける筆の選択肢など自由度の高さ、③本物に近いリアルさと精巧さ、④植物由来のヴィーガン原料で、動物への実験を行わず(cruelty-free と呼ばれる)肌に優しい素材と技術で作られているという、主に4点が挙げられます。色は黒一色ですが、これまで子供向けのデザインが多かったテンポラリータトゥー業界に、プロが描くようなリアルでカッコいいデザインと表現を持ち込んだことが最も大きな勝因ではないかと思います。

 顧客層は、”タトゥーには興味あるけど、消えないタトゥーをする段階ではまだない。ファッション感覚でタトゥーで自分を表現したい” 10-20代の若い世代=ジェネレーションZ世代で、彼らのマーケティングの随所に、彼らが大事にする “多様性”、”透明性”などの価値観、デジタルでありながら友人のようなリアルなつながりを実感できるコミュニケーションのアプローチを感じます。特に特徴的に感じたのは以下の彼らの声明の中にもあるように、ブランドのコミュニティーにおける公平性などの、人・グループのつながりの中でブランドと労働スタッフ、そしてカスタマーが互いに尊重しつながっていることを最重要視している点です。アメリカでタトゥー文化は日本より遥かに一般的で市民権を得てはいますが、実際にタトゥーを入れている人の多くは、独自性や自分の持つ価値観を重要視する傾向が強いという心理研究結果があります。Inkboxは、ファッション性や機能的価値だけでなく、こうしたタトゥーを入れるということが根本的にもたらす心理的な価値観を重要視しており、それがZ世代の支持を集めているのではないでしょうか。

 

2. ブランドの息遣いを感じるコミュニケーション戦略

では実際にウェブサイトで商品を選び、購入するまでのマーケティング、コミュニケーション戦略をご紹介していきます。

①メールや電話番号をサインナップして20%の値引きを獲得する。
メンバーとしてメールアドレスや電話番号を登録すると、Eメールやテキストでセールや新製品、ブランドメッセージなどの最新情報をInkbox が週に3-4回程度ダイレクトに送ってきます。更にお友達を紹介すると30%値引きクーポンももらえます。こうした囲い込みをして情報を取り、ダイレクトにコミュニケーションをとるような仕掛けがたくさんあります。

②初回メールを受け取る。
登録すると、メールやテキストで初回のクーポンコードが届きます。クーポンコードだけでなく “Welcome to the club!”というメッセージとクールなイメージ付きで、初回顧客のショッピングへの期待感を高めてくれます。

③商品を選ぶ
先述したように1万以上の商品があるので、選ぶ作業も楽しいですが、この中から自分の好きなデザインを見つけていくには結構大変。そういう人のためにクイズ形式で好みのデザインを絞り込んでくれます。(このクイズへのリンクは②の初回メールに “Not sure where to start? Take the Quiz!” (どこから始めたらいいかわからない?このクイズをやってみて!)というリンクがあり、そこからも飛べます。

④決済する
最近のAmazon 以外のオンラインショップでは当たり前になってきていますが、決済方法はShopify の提供するShoppay, Paypal, Applepay と、いずれかにアカウントや購入履歴があれば情報記入が極めて少なく済むサービスを導入しているため、かなりスムーズに決済が完了します。出荷方法も、”I want to help minimize waste!” (出荷梱包を少なくする)というオプションがあり、環境配慮を重視する姿勢がうかがえます。

⑤商品到着
オーダーしてから商品到着までは7日かかりました。通常出荷を選んだので遅くもなく早くもなくという感覚です。出荷の連絡はメールとテキストで随時アップデートされ、How to applyなどの動画なども送られてきて、コミュニケーションを切らさないようにしてくれます。
実際の商品は写真のような感じで、簡単な緩衝材付きのブランド名の入った袋に入ってきました。(梱包ごみを少なくする、を選んだので箱は案の定潰れてました・・)商品と一緒にカードが入っていて、どうやって取り付けるか、注意点などが分かりやすく書かれていました。基本的には動画による取り付けを促しています。使用の感想は簡単に取り付けできるし、デザインや見た目にリアルな感じがあり、カッコいいです。時間が経つと落ちてきますが、シールのように一部がはがれていってしまうわけではなく、徐々に薄れていくので違和感も少ないです。ただ、定着までに24時間くらいかかり、それよりも前にこすったり濡らしたりすると滲むので、綺麗に残すのは結構難しいなというのが印象。改善されてほしい。


⑥Inkfam ロイヤリティープログラムでポイントを獲得する
Inkfam というロイヤリティープログラムを作っていて、ポイントごとに値引きや無料商品をもらえたりします。

⑦SNSでシェア
私はしていませんが、、Instagram やTiktok で # tattoosfornow のタグで消費者の投稿が6000以上あり、インフルエンサーはじめ実際の使用シーンを多く紹介しています。

3. まとめ

 Z世代に人気のInkbox 、いかがでしたでしょうか?一昔前には次の新しい世代といわれていたミレニアルズ世代は社会的に立場を確立しており、Z世代とは問題意識や価値観、トレンドなど多くの点で異なることを改めて実感しました。ミレニアルズ世代はApple に影響を受けたミニマルでクリーン、合理的なマーケティングアプローチを好む傾向にあるのに対して、Z世代はTiktok やYoutube などの動画コンテンツに慣れていることで、よりリアルで人間らしさの感じられるマーケティングアプローチを好む、というような点は特筆すべき点かなと思います。Inkbox の動画や写真も、その場の空気感や臭いといったものまで感じられるようなコンテンツなのがとても魅力に感じました。

 今回は「タトゥー」というちょっと特別な商品の切り口でしたが、今後はさらにいろいろな分野におけるZ世代向けのマーケティング戦略をご紹介できればと思います!

Lily

BOUS 代表。中央大学卒業後、キャノンマーケティングジャパン入社後、BtoB デジタルマーケティングの販促に携わる。2014年に単身渡米。NYにて20年以上日本企業のアメリカ市場進出サポートを行うMira Design へ入社。その後7年間、ジェネラルマネージャーとして、市場調査、企画、デジタルマーケティング、メディアPR, 営業と包括的に日本企業の海外進出をサポート。2021年独立、Bous起業。

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