<最新トレンド③> ブランドに求められている"根本的な透明性"とは?

目次

  1. はじめに

  2. 企業が透明性を求めらる理由

  3. 小売企業3社の事例紹介

  4. まとめ


1. はじめに

みなさんは"Radical transparency"という言葉を耳にしたことはあるでしょうか? "Radical transparency"とは日本語で「根本的な透明性」と訳され、「The State of Fashion 2020」の調査では、約20%の経営者が、昨年のビジネスに影響を与えるテーマのトップ3にこの「透明性の確保」を挙げているほど昨今のビジネスではホットなテーマです。「根本的な透明性」とは、政治やビジネスなどの様々な分野で使用されるフレーズであり、組織的なプロセスとデータの開放性、透明性を根本的に高める行動とアプローチを意味します。


ここでは今回小売企業がどうして「根本的な透明性」を高める必要性があるのか、そして具体的な取り組みをご紹介していきたいと思います。





2. 小売企業が透明性を求められる理由

近年小売企業は「根本的な透明性」を高めるために製造・販売過程に伴う排出量の計測したり、素材の調達による生態系への影響などを一般に開示し始めています。ではどうして企業は内部情報をこれほどまでオープンにしているのでしょうか?それは主に2つの要因が挙げられます。

1つはコンシャスコンシューマーの台頭です。コンシャスコンシューマーとは「自分の消費行動がもたらす結果までを考え、なるべく負のインパクトを環境や社会に与えない選択肢を求める人」を言います。コンシャスコンシューマーは特に購買活動の中心となっているミレニアム世代、Z世代に多く、総じて彼らは社会問題に関心を持ち、その結果、商品がどこでどのように作られているか、デザインの出所や商品の品質など、さまざまな問題について、企業により多くの情報を求めるようになりました。


 2つ目の理由とした挙げられるのはSNSの影響力です。

ミレニアム世代の購買行動の特徴として、購入前のレビューや口コミを大事にします。そうした行動に一役買っているのがSNSなのです。コンシャスコンシューマーの中には、アパレル系ブランドがどれほどエシカルなのかを評価するアプリ「Good on you」や、サステナビリティの分野で活躍するユーチューバーの動画を参考に購入を決めている人も多くいます。こうしたアプリやインフルエンサー達による、厳しい評価によって、製品を売るための見せかけのサステナビリティマーケティングはすぐに見破られてしまいます。

 またSNSによって個人がメディア化する時代となった今、口コミやレビューを重視するミレニアム世代を取り入れたインフルエンサーの影響力を企業は無視できなくなっているのです。そえゆえ企業は消費者からの信頼を得られるように、様々な情報を開示することが近年求められています。

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3. 企業の具体的な取り組み紹介

こうした社会的変化の流れを受けて、いくつかの企業は製造過程の徹底的な透明化に向けて動き出しています。今回はその中でも3社の小売企業をご紹介したいと思います。

Reformation https://www.thereformation.com/

「Reformation」は、2009年にロサンゼルスの小さな店舗でヴィンテージウェアを販売することから始まり、現在では、持続可能性を重視して、自身で商品を作り販売するアパレル企業です。「Reformation」の透明性を高める取り組みとしてはRefScaleという手法を用いて、販売するすべての衣料品の環境影響を測定し、その結果を顧客に開示しています。

 それぞれの商品が環境に与える影響や、アメリカで一般的に購入されている洋服と比較して、どのようにその影響を軽減しているかを伝えることで、ファッションにかかる総コストを皆で確認し、お客様が力強く選択できるようにしています。

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参考URL:What is RefScale?





Italic   https://italic.com/

「Italic」は、PradaやAlo Yoga、ALL-Cladなどと同じ工場で作られた高級バッグや衣料品、家庭用品などを販売する会員制の小売店です。「Italic」は自社サイトで人気商品であるキャンドルについて、製造秘話だけでなく、原材料や部品の調達活動、商品製造や商品加工に伴うコストを開示することで、現在の販売価格を実現できたのかをアピールしています。

参考URL:Why We Lost Money On Our Candles




Stella McCartney   https://www.stellamccartney.com/

ポール・マッカートニーの娘であるステラの立ち上げたラグジュアリーブランドの「Stella McCartney」は2015年度に初めて環境配慮型の損益計算書を発表しました。温室効果ガス、大気汚染、水質汚染など6つの環境影響分野において、ブランドの環境への影響を定量化し、その物質的影響は過去3年間で35%削減されたと報告されました。

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参考URL:STELLA MCCARTNEY- Luxury brand announces environmental profit and loss accounts



4. まとめ

UBS証券の調査によると、日本でもコロナ禍を経て、「環境に配慮した商品」や「社会的責任を果たしている企業」に対して多くの消費者が、より高い価格を支払うとの結果が得られた、と言われています。これは低価格志向が強く、価格競争に巻き込まれることが多い日本でも、企業が積極的にサステナビリティに取り組んで発信すれば、価格競争から脱出できる可能性を示唆しています。しかし安易な考えでサステナビリティを取り入れると、コンシャスコンシューマーからグリーンウォッシュ(上辺だけの環境保護活動)だと非難され、その後の企業のイメージを払拭することが難しくなる恐れもあります。

 多くのブランドがサステナビリティをマーケティングや小売戦略に採用し始めている今だからこそ、消費者がより高い価格を支払う意味を理解し、企業はいい面だけでなく、失敗や現時点で行える限界についてもオープンする、裏付けのない主張をしない、そういった「根本的な透明性」が消費者から求められているのでしょう。

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